
柔道選手が異種格闘技で勝つために
近年盛り上がりを見せる格闘技ブーム。
一時期のプロレスブームが去った後の格闘技低迷時代を考えると今の盛り上がりは正直未だに信じられません。なにしろ民放各局がこぞって自分たち専用の格闘技の大会を持つ時代です。PRIDEは裏の組織の問題でフジが手放しましたが…
で、初期の格闘技ブーム時代はK−1がイコールな部分があったため、打撃系格闘技―空手やキックボクシングなどがもてはやされましたが、近年はいわゆる総合、立ってよし寝てよしの格闘技大会が人気です。もちろん俺もそちらの方が好きです。好きな理由は単純明快。実際のストリートファイトに近いから。路上での戦いにお互いが倒れたら大人しく立ち上がるなんてルールはないですし、打撃無しの格闘技のようにお互いが手を出しあわないなんて状況もありえません。もちろんスポーツとしてはそれでいいのですが、「格闘技」つまり戦いという原点においては総合が最も実戦に則したものなのです。
今現在の総合格闘技の世界で主流となっているベースの格闘技は柔術です。それもグレイシー柔術に代表されるブラジリアンスタイル。やはり絶対的な
グラウンドの技術がベースにあるからこそ自信を持って打撃戦に臨めるのだと思います。
そんな中最近一大勢力となってきているのが柔道出身者です。日本人だけでなく、ヨーロッパや韓国の柔道選手までもが、総合格闘技への転身を果たしています。ここまでの柔道選手の総合格闘技への参加の土台を築いたのは、間違いなく小川直也そして吉田秀彦でしょう。
彼らの参戦、そして活躍こそが他の選手たちの転向を後押しした部分は決して否めないでしょう。
しかし、全ての選手が彼らのように活躍=勝利できているかと言えば答えはNOです。
それは何故か?その回答は特に吉田秀彦の戦い方に隠されているといってもいいでしょう。
彼はスタンディングでの打撃には極力付き合わず、凌いで凌いで距離を詰めます。そして足技(主に小外刈り、大外刈り)ないしタックル(柔道では双手刈りといいます)でグラウンドの攻防に持ち込み、関節技、締め技でタップを奪うというのが勝利パターンとなっています。
彼はこのスタイルで柔道出身者として最強の地位にいるといっても過言ではないでしょう。伊達に金メダリストではありませんから。
ですが、他にもいる柔道出身者が同じように勝利を重ねることが出来ないのは何故でしょう。
全てがそうではありませんが、柔道選手の多くが打撃に付き合いすぎ、及び打撃への対処練習を身につけていなさすぎの二点が挙げられると思います。
高校の頃、自分が柔道をやっていた頃の人気柔道マンガ「帯をギュッとね!」では柔道のストリートファイトでの戦い方が記されています。それを要約するとこうです。とにかく捕まえてグラウンドの攻防に持ち込んでしまえ。この一点につきます。また一対多数の戦いには前述の理由で向かないとはっきり断言しています(作中でも主人公の仲間が腕ひしぎ十字固めをかけた瞬間に敵の仲間から蹴りを入れられているシーンがあります。また他の仲間が締め技に入ったときに「援護してくれ」と要求しているシーンもあります)。もちろん柔道の投げ技というのは基本的に大ダメージを与えるようには出来ていないし(やろうと思えば出来るけど、それをすると殺人術と言ってもおかしくなくなってしまう)、打撃技が一切無い以上、長期戦になってしまうでしょう。
少し話が逸れましたが、つまり柔道出身の選手は実際の試合で柔道家であることを必要以上にアピールすることはないのです。アピールする瞬間といえばグラウンドの攻防に持ち込んだとき。その瞬間に今まで隠していた柔道技をこれでもかというほど味あわせてやればいいのです。
それなのに、打撃戦に中途半端に付き合うから、何も出来ないままボコボコにされてしまい敗北するのです。
ということは逆に柔道選手の勝ちパターンというのは、最初に述べた吉田秀彦の戦い方以外にはないと思えます。
柔道選手が他の格闘技の選手と戦って勝てる可能性のあるのはグラウンドでの攻防だけ。打撃には決して手を出さない。
つまり打撃に関しての練習は自分から手を出すための練習ではなく、ディフェンス面の強化を図る練習。打撃に対する反応速度を上げるとか、ローキックへの対処法だとか、タックルが来たときのタックルの切り方だとかそんな練習を徹底して身に付けることが大事だと思います。
もちろん手を出させないっていうのも大事ではあると思うのですが、うかつに手を出してカウンターを喰らうというのだけは避けたいので何があってもじっと我慢。端から見てるとかなり情けない戦い方ではないかと思いますが、プロの格闘家である以上、勝つことが至上命題。勝つためだと自分に言い聞かせてじっと我慢です。
まあ偉そうにこんなこと言ってますが、もちろん実際に戦う選手たちには敬意を表してますし実際自分にそれが出来るかというと、出来るわけはないんですがね。