
ビバ!くじ運
皆さんこんにちは。
宝くじ買ってますか?夢、追ってますか?
俺は毎週ロト6買ってますよ。最高当選金額は1000円ですが、何か?
さて、俺のくじ運の悪さはかなり定評がありまして、ただ悪いだけじゃないんです。
悪いのが連鎖反応するというか、当たりたくないくじには見事当選するというか。
それが凝縮されたのが、高校二年の秋~冬でした。
事の起こりは席替えからでした。当時のクラスは毎月一回席替えを行うのが決まりでした。何故かはわかりません。
やはり高校生ですから、仲のいい友達や好きな子の隣や近くの席になりたいと思うのが普通です。
席替えはくじで行われます。番号の書かれた紙を引き、その番号に当てはまる席に移るというルールです。
その月、俺が引いたのは教卓のまん前の席でした。いわゆるハズレの席です。
しかし、切り替えの早い俺のこと、「一ヶ月我慢すれば何とかなる」と思い耐えることにしました。
そして一ヵ月後、次の席替えがやってまいりました。
くじを引く前に十字を切る俺。くじの紙から発せられるオーラを感じ取ろうとする俺。「早くしろよ」と急かす級友。果たして引いたくじは…またしても教卓の前の席。俺は失意のまま皆が机を動かしながら楽しく談笑しているのを見ていました。
それから数日後でした。
我が母校は(今ではどうか知りませんが)高校二年の冬にスキー修学旅行をすることになっていました。
そして俺らの代からそれまでの長野ではなく、北海道へと変更になったという情報を得ました。必然的に盛り上がる生徒たち。もちろん俺も同様です。スキーなんか一度もやったことのない男にとって修学旅行が初スキーというのいいじゃないですか。
ですがしかし。
高校ならではというか、生徒の自主性を云々なのか、修学旅行委員の選出という厄介な出来事が待っていました。当然そんな面倒くさい仕事をやりたがる人間などいません。というわけでくじを引くことになりました。
果たして俺の引いたくじは…っ!!
見事修学旅行委員決定。
20分の1の確率を引き当てたわけです。そんなくじ運いらねぇ。
そんなわけでそれから週1~2回くらいのペースで修学旅行委員会が開かれ、その都度俺は部活に遅れながら旅行についての様々なことを決めていったわけです。
そしていよいよ修学旅行の日が近づいてきた頃、委員会を統率する先生からこんなことを言われました。
「修学旅行の前の日に『結団式』というのをやる。そこで壇上に立ってスピーチをする奴を決めよう」
いや待て。結団式っていうのがそもそも理解できない。別に結団しなくたっていいじゃん。と誰もが思ったその内容に、立候補してスピーチする奴なんかいないわけですよ。
するとやはりくじで全ての物事を決めようとするわけで。
するとやはり俺もくじを引かなきゃいけないわけで。
で、そのとき俺は考えたわけですよ。いつも順番どおりに引いていくから当たりを引いてしまうのだと。
だから一番最後に引こうと。残り物には福があるというし、各クラス二名ずつ、10クラスから20人もの人間が順番に引いて、確率論からいっても19人連続して当たらない事はないだろうとね。だから俺はくじを引く列の一番後ろに陣取りましたとも。堂々と仁王立ちをしてね。
そして俺の順番。
ゆっくりと開かれるくじの紙。
果たしてそこには…っ
見事残り物には福があったようです。スピーチ確定。
がっくりと肩を落とす俺。その理由を知って大笑いの隣のクラスの修学旅行委員。
もうね。
ここまで来ると取り憑かれてるとしか思えないわけですよ。
こうまでくじ運が悪いかと。
もちろん決まってしまったからには壇上で恥をかくわけにはいかないですから、しっかりと“先生と”打ち合わせをして「皆に向けた」名スピーチを完成させ、結団式の日を迎えました。
式自体は滞りなく進み、いよいよスピーチ!
「修学旅行委員代表、結団の言葉」
そのアナウンスとともに颯爽と壇上に登る俺。そしてそこで待つ校長。校長と向かい合う俺。
向 か い 合 う 俺 ?
…
……
………思考停止……・…
そうです。修学旅行委員代表が結団式で読み上げるスピーチは「俺が皆に」ではなくて、「俺が校長に」話すという内容だったのです。聞いてねぇよ…
俺は事前に打ち合わせをしていた先生を見ます。すると先生、バツが悪そうに顔を背けやがりました。
後で聞けば、先生自身も勘違いしていたとの事。氏ねや。
あまり無言で校長と向き合い続けるわけにもいかないので、俺は意を決して口を開きました。
事前に用意した原稿の主語や文末などをその場でアドリブで変更、なんとか「俺が校長に」向けて話すような内容に変えることができました。
もちろん結団式が終わった後、俺がどっと疲れたのは言うまでもありません。
そして修学旅行が終わり(旅行中も色々あったけどそれはまた後日)、また席替えの日がやってきました。
以前、結団式スピーチの時のくじの痛い教訓を生かして、受身の姿勢ではなく攻めの姿勢をとることに
しました。一番最初にくじを引くのです。そうすれば教卓の前という40分の1の席を引き当てる可能性など皆無。そう信じて思い切りくじを引きました。
数日後…
英語の教師が授業開始前に俺に尋ねました。
「あれ?席替え…したよね?」
「…ええ、俺以外はね…」